演奏をする前には、楽器を持ったり、構えたりといった準備のための動作がありますね。
この時に何を考えてやっているでしょうか?
私は先生にこの質問をされた時に、自分が何をやっていたか、まったく思い出せないくらい無意識にやっていた事に気が付きました。
演奏をする時には、練習して意識的に色んなことに気が付けるようになったとしても、演奏出来るようになるための準備の段階で常に意識的になるのは難しく、ついこれまでの習慣(慣れ親しんだやり方)を使ってやってしまいがちです。
どうせ意識的にやろうとするなら、この準備の段階から意識的にやった方が、その後に続く身体の使い方が変わります。
まず頭が動いて自分全部がついて来て、(←この部分はいつも最初に来ます)楽器に指先から近づいて行って、楽器に触れます。触れたらそこで初めて、手は楽器の形に沿って形を変えます。
頭が動いて自分全部がついて来て、手を楽器の形に沿わせて少しずつ持ち上げていくにつれ、その重さが徐々に手に伝わります。そして楽器の重さを持ち上げるのに必要な力だけを使う事が出来ます。
今度はまた頭が動いて自分全部がついて来て、楽器を持つのに必要なだけの力を使って持ち上げた楽器を、演奏のために必要な場所へと動かします。
(「頭」ってどこ?と思われた方はこちらの記事をご参照ください)https://nikonikoalex.com/entry/2021/03/08/220029
初めはゆっくりと練習すると良いと思います。毎回練習すると、普通の速さでやっても出来るようになって来ます。初めはひとつひとつ確認しながらやる事になると思いますが、練習すれば一連の継ぎ目のない動きとして身につくようになります。
これは一例であり、細かい手順はその時の自分の状態により、変わったりします。
例えば、「指先がリードして楽器に近づく」という思い方では少し足りないと思う時には、股関節の動きを思う事もそこに付け加えたりします。
大事なことはいつも「自分全部が統合して動く」という事です。そのための自分への指示出しなのです。
ここで「頭が動いて自分全部がついて来て…」と言う時に、「身体」と言わずに「自分」と言っている事にも意味があります。
「自分」は身体も精神も含んだ存在だからです。人は身体と心を切り離す事はできない「心身統一体」である、という考えが、アレクサンダーの発見した原理の中の一つです。