「頭が動いて自分全部がついて来る事を"お願いして"〜(自分のやろうと思う事を)する」
アレクサンダー・テクニークでは、すぐさま物事をやろうとする代わりに、このような言葉を、先に自分自身に言ったり、思い浮かべたりしてから取り組みます。
「すぐさまやってしまう」と、これまで何度もやって来た、習慣的なパターンを繰り返してしまうから。
脳は何度も繰り返しやる事を、いちいち考えてやらなくても良いように、習慣化するという機能を備えています。これは普段の生活の中で必要な機能です。
例えば、毎日歯を磨くという行為は、子供の頃に教わって自分で初めてやるようになった頃は、ひとつひとつ手順を考えながらやっているかも知れませんが、だんだんと、他の考え事をしながら、あるいは歩きながらでも出来るようになります。習慣化することによって、脳に余地が生まれるのです。それによって脳は、たくさんの仕事を一度にこなせるようになるというわけです。
ところが、これまでとは違うやり方を選びたい時には、これまでと同じやり方でやっていては上手く行きません。
そこで、すぐさまやらずに、一旦立ち止まる必要が出てきます。
そして冒頭で出て来た「頭が動いて自分全部がついて来る事」をお願いするのです。
なぜ直接的に「やる」とか、「する」ではなく間接的な「お願い」なのか。
私も、学び始めた時はとても不思議でした。
学びを積み重ねて行くうちに、徐々にわかって来たことがあります。
前回の記事https://nikonikoalex.com/entry/2021/03/08/220029
で書いたように、頭と首の関節の位置は、直接触れる事も、感じる事も出来ない場所にあります。
それから、「やろう」とする事は、これまでのパターンを呼び起こしてしまったり、部分的なところに注目し過ぎてしまったりして自分全体の統合性を欠いてしまいがちです。
これらの理由から、「お願いする」という言い方で言って、自分の頭の位置を思い浮かべ、周辺の筋肉を緩めて、その後は変化が起こるように任せるというやり方が、実は一番大きな変化を起こす事ができるという事なのだと思います。